S君のこと(スポーツカー編)

友人S君は国産スポーツカーの某Z(全然伏せ字になってない)に乗っているわりに、就職するまではペーパードライバーだったという経歴の持ち主である。彼は、その穏やかな性格そのままに、某Zの3.5L、280馬力のエンジンを駆使して、山道を時速60kmで走っている。
就職して車を選ぶにあたってどうして某Zを選んだのか、彼に聞くと「僕だって夢があったんです!」としか言わない。そんな彼の車の助手席に乗った女性はいまだに彼の母親のみという噂を聞くが、それが真実かどうかは彼の口から語られることはないだろう。女友達を含むみんなで遊びに行くことになっても、二人乗りの某Zはあまりにも使えないので、集合場所の駐車場に放置されることになる。

彼の運転する某Zに乗った時、一つ気になる彼の運転の癖があった。妙に車が道路の左側に寄るのである。まあ、運転している自分が道路の真ん中になるように運転すると、必然的に車が道路の左側に寄ってしまう、あの初心者にありがちな運転の癖である。車の10cm横を電信柱が通り過ぎたりするので、助手席に乗っていると時にはひやっとすることもあった。
そんな彼にこの間会ったのだが、妙に元気がない。話を聞くと、某Zをガードレールにぶつけたらしい。「なんでそんな事故したんだ?」と聞くと「いや、普通に走っていたら、いきなり道の左側のガードレールに車のサイドがぶつかったんです」とのこと。
彼の運転の癖を考えると、やはり運転中左に寄りすぎた結果ガードレールに自らぶつかっていったとしか考えられないのだが、そんな運転ミス、自動車学校の生徒でもしねえぞ、というツッコミはあまりに彼の落胆具合がひどかったのでぐっとこらえて「ここは一つ、二人乗りなんていう使えない車はやめて、8人乗りくらいの車に買い換えてみんなで温泉行こうぜ」と慰めておいた。
そしたらもっとS君はへこんでいた。なんでだろう(鬼畜)。
そして、二度と彼の車の助手席には乗るまいと心に誓った僕。